一夜明けて。

　
　恐ろしかった地震から一夜が明けた。
　夜中もずっとNHKのテレビを付けっぱなしにしていた。
　テレビ画面からはコンビナートの火災と、津波が黒い魔物のように瓦礫を身に纏い、町や
田畑を呑み込んでいく様子が繰り返し流され、胸がしめつけられる。


　眠ろうにも気持ちがざわついてどうにもならない。
　加えて震度としてはわずかではあるのだが、ひっきり暇なしに家が揺れている。
　

　ようやくウトウトしかけると今度は携帯電話が「緊急エリア速報」を受信し、これは電源
を切っていても鳴り響いてしまうので更に不安感を煽られ、あまりまとまって眠ることがで
きずに朝を迎えた。

　
　昨夜は夜中になってようやく少し電話が通じるようになって、兄から電話が入った。
　「渋谷から町田まで歩いて帰ったよ。携帯の万歩計を見たら60000歩。5時間かけて帰宅
した。さすがに疲れたよ」
　と言う。渋谷の街も地震直後は人々の叫び声や多少の倒壊もあり、パニックだったそうだ。


　兄は世田谷通り（津久井道）を歩いて帰ったそうだが、同じく電車に乗れない人々がぞろ
ぞろとものすごい人の数だったそうだ。
　途中でコンビニへ寄るも、棚は見事にカラになっていて仕方なくチョコレート（カロリー
が高いので疲れがとれると思ったそう）をかじりながら自宅へ向かったらしい。

　それに加えて鶴川を過ぎたあたりから大規模な停電があったそうで、街が真っ暗。信号も
街灯もすべてNGで「暗闇がこれほど怖いと思わなかった」と言っていた。

　
　我が家の方もカズさんが帰宅できずにいたのだが、会社の皆で話し合った結果、歩くのは
まず無理なので会社の車を数台出して、同じ方面の者たちが乗り合いで帰宅することに決定
し、社のある品川を20時過ぎに出たらしいのだが、実際に帰宅できたのは24時を少し過ぎ
た時間になってしまった。神奈川地方はそうでもないのだが、首都圏を抜けるまでの渋滞が
ひどかったらしい。

　乗り合わせた人間たちで「小腹が減ったからコンビニへ…」と車を停めたそうだが、やは
り同じくコンビニ店内は見事に食べるものがなく、皆空腹を抱え帰途についたらしい。


　こんなに便利だ、と思っていた世の中がほぼ壊滅した。
　いや、きっと便利なだけに壊滅状態が拡大するのだとも思う。
　石器時代？みたいにシンプルだったらこうまで被害が拡大しないのかもしれないけど、文
明化すればするほど被害が甚大になってしまう。


　と今、これを書いている時も家が揺れている。
　こんなに地震をくらったのは初めてのことだ。
　余震が止まらない。
　しまいには、体がおかしくなっているのか、揺れてもいないのに始終振動しているような
気すらしてくる。

　
　昨夜、カズさんが帰宅してからこんなことを話してくれた。
「会社の女の子がさっき言ってたんだけど『友達から数日前に太陽の周りにオーラみたいな
ものが出ているところを見たと連絡があって、地震が近いと思うって言ってた。それも巨大
地震』と言われたんだって。本当になっちゃったな」とのこと。

　
　これだけ大きな地震だったのだから前兆がいくつもあったに違いないと思う。
　この太陽の周りのオーラ現象は多くの人が目にしているらしい。
　そのほか、異様な夕焼けや地震雲が出ていたとの情報も多数あった。


　信頼性がどこまであるかはわからないのだが、私も数日前不気味に横たわる地震雲のよう
な雲を見た。
　専門家の人が言っていたが、「地震雲というのは一見して異様だ、と誰もが分かるような
雲です」とのこと。
　雲も異様な形をして教えてくれているのだろう。


　私の母などは地震前日から「頭が痛い」と言いっぱなしだった。それで寝込んでいた。
　風邪をひいているせいじゃないかな…と思っていたが、発熱もないし、本人曰く「あまり
経験がないような痛み方で大きな地震が去った後は治ってしまった」という（まあ、驚いて
治ったという話もあるが…(^^;)）。でも、この頭痛を感じた、妙な耳鳴りがしたという方、
今回の地震でも、そして阪神大震災の時にも多かったように記憶している。

　人間だって動物なんだもの、前兆現象を感じて当然だと思う。

　ただ、自然現象だけにその予兆があっても悲しいかな、「いつ来る」かまでは当然わから
ないわけで、なかなか身を守る準備までには至らなかったりする。


　今、津波に加えて原発の方もとても気になる。
　直近にお住まいの方々は避難を余儀なくされるわけで、その不安と心配は募るばかりだと
思う。
　放射能が漏れているとしたら大変な事態だ。
　以前にも放射能臨界事故があった時、隠蔽だか正確に把握できなかったのかは分からない
が、きちんとした情報が発信されず、情報が錯綜し、不安ばかりが煽られた。
　政府はその責任をきちんと遂行してほしい。
　放射能が流されたらただではすまないのだから。


　一方、津波も凄まじかった。
　NHKの報道で、津波が街や田畑をのみ込んでいく様子はただただ恐ろしくて、思わず目を
覆った。見ていられなかった。
　どうか、少しでもこの事態が収束されていってくれますように。
　心から祈るばかり…
　どうか一人でも多くの命が助かりますように、と。


　今日の横浜地方の空は穏やかに晴れ渡っている。
　昨日の地震などまるで何もなかったかのよう。
　そのギャップが逆に恐ろしくて、自然の力の前に人間がいかに無力であるか、ということ
を思い知らされる。


　様々な方からご心配をいただきました。
　皆さま、本当にありがとうございます。
　まだこちら神奈川は被害が少なく、幸いなことに通常の生活を営むことができていますが、
東北地方の方々の被災・壊滅状態を思うと言葉が見つかりません。自分に今何ができるだろう…。
　
　

　※一番上の画像は昨日撮影したもので、巨大地震から1時間程度経った時の川の様子です。
いつもはこんな色では決してないのです。津波による影響ではないかと思うけれど、この色を
見ると恐らく多少、海側からの逆流があったに違いない気がし、これほどすぐにこんな神奈
川の小さな川まで影響があるのか…と身が細りました。



　3/13　20:40追記

　地震は大きかったながらも、それほど深刻な状況に陥ることなく通常の生活を現段階で送
ることができています。
　自分に今何ができるかということを考えました。
　とても小さいことでしかないのが心苦しい限りですが、書き出してみました。
　
　●現地の方の掲示板を読みました。

　「被災地上空を報道の ヘリが飛ぶと、それがものすごい音となり、辺りから上がる助けの声や必要な要求がこの ヘリの轟音のせいで聞こえなくなってしまう。報道用のヘリは上空を飛ぶことを遠慮して ほしい」という訴えを目にしました。

　この書き込みをなさった方は一般人であり、被災地にいらっしゃる方からの呼びかけで
あり、なかなかこれを広めることができずにいるそうです。「一人でも多くの方にこれを
広めてほしい」と。

　そういう私のブログもまた一般人レベルに過ぎず、どうにもならないかもしれません。
でもやはり一人でも多くの人間がそれを訴えたいと思い、ここに記しました。

　報道関係者の皆様、どうか報道のヘリの滞空取材は慎重なご検討をお願いしたいと思い
ます。
　取材も大事なこととは思いますが、今は「命の救出を最優先」に一刻も早い救助をお願
いしたいのです。

　●できる限りの節電を心がけるようにしています。
　現在、原子力発電所の案件もあってか全体的な電気の供給量が低下しているそうです。一人一人が心がけることで良い方向へ、と考え電気使用量を必要最小限の使用にとどめたいと思っています。

　一人一人が心に決意することで、この事態を克服できたらと思います。
　これからもできることは全てやっていくつもりです。

　被災地の皆さまへ心よりお見舞いを申し上げます。
　一日も早い復興、そして原発事故がこれ以上に拡大をしないように祈るばかりです。


　

コメント 2

まだ、揺れてるのですか??
自然とは、本当に怖いですね。
支援物資も送りたいし、出来ることなら現地に行ってボランティアで
困ってる人の力になりたいと思うだけで、それに対して何もできない
自分の歯がゆさ。。

私が行っても歳だし力も無いし何の役にも立てないから
我が子に「ボランティアに行っておいで！！」と真剣に言いたい自分です。

3月の始めにダー父が尾鷲の方で凄い波風で船に乗って帰って
これず仕方無く船を置いて電車で帰って来たことがありました。
今、考えると既に海底では何かしら動いていたのかなと思ってしまいます。
行方不明者の方の人数が増えるたびに心が痛みます。
by Aug (2011-03-12 20:42) 

Augさま

　メッセージありがとうございます。
　こちらは余震の回数自体はだいぶ減ったものの、まだ揺れる時が
あります。携帯に入る「地震速報」の数もものすごい数なのです…
　仰るとおり本当に自然の力の大きさには人間などどうにもならな
いものですね。私自身ももっと目に見えて何かできればと考えます
が、なかなか良い方法が見つからずにいます…。
　
　お父さんのお船の件、本当に地震の前兆だったんでしょうか…！？
今回は海底地震ですからそういう可能性も十分に考えられますよね！
でも何よりご無事で本当に良かったです。

　原発のことも、津波の被害も、何もかもが何とか良い方向に向かっ
てほしいと祈るばかりです…。
　今日一日もやはり精神的にはかなりきつい一日でした。
　自然災害の恐ろしさに大きな衝撃を受けるばかりの弱虫な自分です…
by earlgrey (2011-03-12 23:26)